会社との労働関係の終了事由としては,主に以下のようなものがあります。
まず,使用者と労働者が合意によって労働契約を解約する「合意解約」があります。次に,労働者による一方的な労働契約の解約である「辞職」があります。さらに,使用者による一方的な労働契約の解約である「解雇」があります。その他にも「定年制」や「労働者の死亡」などがあります。
これらのうち,解雇は使用者が労働者の生活基盤を一方的に奪うものですので,厳しい要件を満たさなければ無効となってしまいます。これに対し,合意解約や辞職は,労働者に労働関係を終了させる意思がありますので,解雇のような厳しい要件は課されていません。
このように,合意解約や辞職は,解雇のような厳しい要件が課されていませんので,会社から不当に解雇されたということで争いになるような事案の中には,先に労働者から退職の意思表示があったので合意解約であって解雇ではなく,正当に労働関係は終了していると会社側から主張されることがあります。先に労働者が退職の意思表示をしていたとしても,会社が退職を強要したり,解雇理由がないのにそれがあるかのように装ったために労働者を誤信させたりなどした結果,退職の意思表示がなされた場合には,会社の行為は詐欺や強迫となり得ますので,その場合には退職の意思表示が無効や取消しになる可能性があります。退職の意思表示が無効や取消しになれば,労働関係は終了していないこととなりますし,それにもかかわらず労働関係を終了させた場合には解雇となり厳しい要件が必要となってきます。
以上のとおり,労働関係の終了が解雇なのかそうでないのかによって,結論が大きく変わってくる可能性があります。具体的な事実関係において解雇に当たるかどうかについては難しい判断が必要になってきますので,このような問題でお悩みの方は是非とも当事務所までご相談ください。
以上